できもの

できものとは

皮膚や皮膚の下(皮下、軟部組織)には様々な腫瘍ができます。これを一般的にできものと言います。そのまま放置しておいても生涯ほとんど形態を変えないものから、どんどんと大きくなるもの、浸潤して命に関わるものまであります。

悪性所見がない(がん細胞がない)できものの事を良性腫瘍と呼び、ほとんどの良性腫瘍は放置しても命を脅かすことはありません。しかし、腫瘍によっては時間とともに大きくなり、外観上気になるようになったり、日常生活に支障がでたりすることがあります。時に炎症を起こし、腫れて痛みが出ることもあります。

できものの治療には、まずは良性腫瘍か悪性腫瘍かの判別が重要です。

良性腫瘍は、日常生活に影響がなければ経過を観察することもありますが、基本的な治療は摘出する手術になります。

できものとは

代表的なできもの(良性腫瘍)の種類

  • ほくろ

    ほくろ

    ほくろは、色素性母斑/色素細胞母斑/母斑細胞性母斑などと言い、母斑細胞が増殖した腫瘍の事です。母斑細胞がメラニン色素を産生するため、多くは褐色や黒色に見えます。中にはほぼ色素のない(通常の肌色)ものもあります。

    生まれつきのものもあれば、出生後から出現するものもあります。平坦なものや少し盛り上がったもの、大きいものや小さいもの等、様々な形態のほくろが存在します。

    最も大事なのは、悪性黒色腫をはじめとした悪性腫瘍との鑑別です。月単位で大きくなっている、サイズが6mmを超える、左右が非対称で色むらがある等が悪性腫瘍の所見ですが、良性悪性の診断は専門医でも難しいため、一般の方にはまず判断できないでしょう。少しでも心配があれば気兼ねなく相談してください。

    ほくろの治療法

    数mm程度の小さいほくろの場合は、メスで摘出して縫合する方法、丸くくり抜くメスで摘出して開放創とする方法、CO2レーザーで焼灼する方法などがあります。縫合した場合は、術後1週間(部位によっては2週間)程度で抜糸を要します。開放創や焼灼した手術創は、術後2週間程度軟膏や創傷被覆材を用いて治療します。

    数mm以上の大きなほくろの場合も同様ですが、摘出して縫合することの方が多くなります。

    また1回で取り切らずに、数回に分けて摘出することで、キズアトをなるべく小さくする方法もあります。ほくろを摘出した際は、多くは病理検査を行い悪性の有無を確認します。

    残念なことに、現在の医学では、消しゴムで消したように全くキズアトが残らない治療はありません。しかし、なるべく目立たない方法を提案いたします。また、ほくろの治療には一部保険適応外(自費診療)のものがあります。自費診療になる際は必ず説明を行います。

  • 粉瘤(アテローム)

    粉瘤(アテローム)

    粉瘤(アテローム)は、皮脂、垢などの老廃物が溜まった袋状の良性腫瘍で、しこりの中心に黒っぽい開口部がみられることがあります。俗に「脂肪のかたまり」と言われますが、内容物は脂肪ではなく、垢などの老廃物です。

    全身どこにでも発生するできもので、稀に自然になくなることもありますが、多くの場合は徐々に大きくなります。ほとんどは日帰り手術で治る腫瘍です。

    しかし、時に細菌感染や炎症をおこして赤く腫れて痛みを伴うことがあります。この段階での摘出は難しく、切開して膿を出すことで炎症を抑えるだけの治療になります。そして炎症が落ち着いて一定の期間を置いてから摘出を行います。

    粉瘤(アテローム)の治療法

    治療は腫瘍の袋を全摘する事です。皮膚に紡錘形に切開を加えて摘出する方法と、小さな丸い穴から摘出する方法があります。

    前者は摘出後に縫合するので、1本の線状の傷跡になります。抜糸は約1週間後(部位によっては2週間後)に行います。後者は摘出後に小さな皮膚欠損創となり、術後2週間程度軟膏を用いて治療します。

    民間療法で、圧迫して無理に出してしまうというものがありますが、皮膚の下で袋が破けてその破片が残ることが多く、その後の治療が難しくなるのでお勧めできません。

  • 脂肪腫

    脂肪腫

    脂肪腫は、皮下の脂肪細胞が膨張/増殖した良性腫瘍です。皮下・軟部組織の腫瘍の中では最も多いと言われています。身体のどこにでも発生しますが、背部や肩に多く、次いで上腕や大腿など体幹に近い部位に多くできます。

    大きさは、直径数mm程度の小さいものから10cm以上に及ぶものまで様々で、通常は痛みはなく、ドーム状に盛り上がった柔らかいしこりとして触れます。

    自然になくなることはなく徐々に大きくなっていく為、周辺組織を圧迫して日常生活に影響が出たり、外観上目立ったりする場合があります。

    腫瘍はなんであっても良性悪性の診断が重要で、脂肪腫も脂肪肉腫という悪性腫瘍の鑑別が重要になります。ただ、分化型脂肪肉腫は術前の鑑別が容易ではなく、病理検査目的に摘出することもあります。

    脂肪腫の治療法

    脂肪腫の上を切開して摘出します。摘出後は十分に止血し、縫合して閉じます。

    抜糸は約1週間後(部位によっては2週間後)に行います。

良性腫瘍はこちらで紹介しているもの以外にまだまだ多くの種類があり、その治療も多岐に渡ります。気になるしこりがあれば、お気軽にご相談ください。